マイナスイオンの測定原理と測定の実際
解説:神戸電波株式会社 技術顧問 薩谷
泰資
1. はじめに
マイナスイオンという言葉が業界をはじめ一般の人々にも浸透し、イオン(荷電粒子)に関心が深くなってきています。しかしその適量性は無視され、一方のプラスイオンは悪玉視される傾向がみられます。 今回はわれわれが生活する環境中(空気中)のマイナスイオン密度の測定のみならず、プラスイオン密度および空間電荷密度(イオンバラス)の測定についても説明します。
2. 環境中イオン(大気イオン、空気イオン)とは
最近発行された岩波書店の理化学辞典(第5版、1998年2月20日発行)でイオンについて調べてみると次のように記載されています。(マイナスイオン、プラスイオンとしての表記はない)
「陰イオン[英仏 anion]アニオン、負イオンともいう負電荷をもつイオン」
「陽イオン[英仏 cation]カチオン、正イオンともいう正電荷をもつイオン。電気分解のときにカソードで放電することからファラデーが命名した」 このように簡単な表記で記載されています。
また、大気イオンについては、
「[atmosheric ions]大気中に存在するイオン。大きさまたは易動度によって、小イオン、中イオン、大イオンなどに分類する。電子を陰イオンに含めることも多い。小イオンは分子1個程度からなり、地表に近い空気中の数は600〜700個/立方センチメートル程度で、陽イオンのほうがやや多い。中イオンは分子が1000くらい。大イオンは数万個程度集まったものである。大イオンはランジュヴァンイオンともよばれ、電荷をもたない中性核とともに凝結核のはたらきをする。煤煙や塵埃の多い大都会に多く、1立方センチメートルの中に数万個ある。大イオンがこのように多くなると、小イオンはずっと減って100個以下となる。大気の電気伝導率にはイオン数と同じに易動度も関係し、小イオンの多いほうが伝導率は大きい。大気イオンは放射線とその他各種の原因による電離で生成される」
少し詳しい記載である。
易動度(移動度:電気移動度)の単位は平方センチメートル/Volt・secで電界(Volt/cm)と速度(cm/sec)の組み合わせである。すなわち移動度の速い粒子は粒径が非常に小さいことを示している。 小イオンは移動度が0.4以上の速いもの、中イオンは0.4〜0.04の範囲、間イオン(大イオン)は0.04〜0.004の範囲または遅い粒子と考えられている。
さらに環境中(空気中)にはいろいろな形、大きさの気体、液体、固体の粒子が混在し、それらには荷電粒子(マイナスイオン、プラスイオン)と非荷電粒子があり、時間的にも変動している。
広く混在する粒子を一の機器で測定することは不可能である。粒径の種類によって種々の測定方法が利用されています。 その中の電気移動法を利用した大気イオン測定について説明します。
3 大気イオンの測定原理
大気イオン(正イオン、負イオン)を測定するセンサーには平行平板型、同軸円筒型等があるが、当社が使用している同軸円筒型センサーの原理について説明します。
図1に示すように基本的には、同軸上に集電極と電圧を印加する電極から構成されている。
図のように印加電極に直流の負電圧を印加して電界(電揚)を作る。小イオン判定では小さい電界(低い電圧)を作る。集電極にはマイナスイオンが集まる。その他は非常に小さいのでアンプで増幅する。
ここで大気中(空気中)のマイナスイオンの小イオン密度をn、大気吸入量をΦ、素電荷量をeとすると電流計Aの電流Iは、
I=enΦとなる。
これより n=I/eΦ
となり、マイナスイオン密度が測定できる。ただし空間電荷密度は零とする。
プラスイオン密度を測定する場合は印加電極に正電圧を印加する。
空間電荷密度を測定する場合は電圧を零とする。
4 測定方法(測定器KST-900型によるデモ)
実際の測定に使用する測定器の仕様、構成は下記の通りです。
1.測定イオン:正負小イオン、移動度0.4cm2/V・sec以上(粒径 約0.002マイクロm以下)
2.空間電圧密度:全イオン数の正イオン数と負イオン数の差
3.測定環境:一般大気中からイオン発生による高濃度環境
4.測定レンジによる測定値:MULTIPLIER - 1 5〜9999 (個/cc)
- 10 500〜99990
- 100 50000〜999900
5.測定最小分解能:5(個/cc)
6.サンプリング流量:60リットル/min
7.電源:AC100V +-10% 50/60Hz 消費電力 10 VA (別売プリンター使用時 15 VA)
8.使用環境:温度範囲 0〜40度 湿度 80%以下 形状 320(W)×220(H)×125(D)
測定手順としては
a. 測定器はできれば1時間以上予熱する。
b. 吸入をOFFにして零調をとる(センサーにはキャップ)。
c. キャップを取ってから吸入する。
d. 測定環境中のイオン状態の3要素(マイナスイオン、プラスイオン、空間電荷密度)を必ず測定する
e. 流量に変化を与えないようにし、更にオーバースケールにも注意して測定物を吸入口に近づける。
f. 時々零チェックを行う。
g. できるだけ大地アースをとる。
5 測定データの例
データの年月日 1998/03/27 先頭データ時刻 17:40
[5分間300データの表示]
データ数 300
平均値 -192
単位(10NS/CC)
天然石マイナスイオンの計測結果 ( 個/CC)
長石 9000 γ線(問題あり)体によくない
花崗石 500
光明石 1000
医王石 4500 α線(体に良い効果)
備長炭 1500
黒曜石 800
岐阜麦飯石 800
南京麦飯石 600
竜王石 3400
角閃石 1800
トルマリン 2500
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