- ファン式とイオン式 -

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                                信州大学 教育学部 家庭科
                                      教授 入江 建久

(1)空気清浄器の種類
 在来、家庭用小型空気清浄器は、繊維性か、静電気式のフィルターを備え、内臓ファンで室内空気を循環させて含じん空気の清浄化を図るもの( フィルターファン式)が一般的であったが、近年帯電粒子の放出によって粒子を捕捉するイオン式と呼ばれルものの普及がめざましい。しかしながら後者の効能については疑念が多く出されている。

(2)室内空気清浄化における清浄機の役割と限界
 空気清浄器は粒子状物質(一部臭気等ガス状物質を含む)の捕集による空気清浄化を主眼とするものであり、外気中の酸素の補充等生存に不可欠の要素までカバーするものではない。これさえ置けば、との誤った宣伝の自粛をメーカー側に強く要望するものである。

(3)粒子捕集率と空気清浄機の性能
 フィルター式はそこを通過する空気中のμmオーダー以上の粒子はほとんど100%近く捕集することができる。空気清浄器の性能を客観的に評価する基準は、日本電気工業会( JEM)のたばこ煙に対するもの以外確立されていないが、現在世界的に問題となっている室内アレルゲンの制御の観点からいえば、たとえばダニアレルゲンなど風化して微細になったとしても量的には7,8割が5μm以上の粒径なので、清浄機に吸収さえすれば、その浄化は容易である。しかしながら、それが正常に働くためには含じん空気が相当量、清浄機を通過することが前提で、フィルタの粒子捕集効率のみをもって清浄機の効能と誤解してはならない。清浄機に装備された送風機によって十分な空気量が部屋中を行きめぐり、含じん空気が吸引され、濾過され、そしてまた吹き出されて来なければならない。部屋全体を冷房する場合と考え方は同じで、フィルターの性能ばかりでなく、対象となる部屋の大きさに見合った送風量と風速分布が確保される必要がある。またその設置位置も大切な条件である。

(4)限定的使用法の可能性
 冷房にせよ室内空気の浄化にせよ、クーラーや清浄器からの空気が効率よく部屋全体に行きわたることが重要であるが、特定のアレルゲンや汚染物質が問題となる人に対する効果のみを目的とする場合には、清浄空気がその呼吸位置に到達することだけ考えればよい場合がある。小児気管支喘息の発作は多くの場合、夜間就寝中の寝返りなどによるふとんや床からの近傍発じんで、飛散したアレルゲンを吸収して起こるといわれている。したがって、汚れた空気を吸わぬよう(発生した粒子は清浄器が浄化しつつ)絶えず顔面には清浄空気が吹きあたるようにしておけばよいと考え、ベッドの部分を覆い、その内部だけに清浄空気を送り込む方法や、さらに局限して、顔の部分だけにしてしまうことも可能である。実際その形式の安価な部分的清浄機も市販されているが、使い勝手には疑問が残されている。

(5)空気清浄器性能の実測・実験結果
 6畳程度の寝室にとりつけた家庭用空気清浄機の空気浄化性能と小児喘息児に対する臨床的効果を調べた実験では、ふとん敷きなどによる激しい発塵を行った場合でも、粉塵そのものの室内濃度は2〜3分で1/10〜1/20に減少し、通常の運転中の室内粉塵濃度も極めて低いレベルに保たれていることがわかったが、夜間運転の臨床的効果については、数週間程度の実験では、顕著な効果を挙げた場合もあれば、効果不明の場合もあった。